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ホテルジャンキー村瀬千文とホテルにまつわるヒト・モノ・コト

母、83才にして立つ

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「渋谷エクセルホテル東急」のスクランブル交差点を見下ろす窓辺に立っている83才の母の図。

母の誕生祝いにホテル泊まりをプレゼントした。

このホテルを選んだ理由は、雑踏が大好き、という母の特性による。

母によると、雑踏には「いい雑踏」と「悪い雑踏」があるそうで、単なる人混みではダメ。たとえば新橋駅の構内とか年末の築地市場なんかは「いい雑踏」なんだそう。余人には理解しがたい。

ともかく、当初提案した銀座の某ホテルは却下され、「渋谷のスクランブル交差点が部屋の真ん前に見えるホテル」という切り札で、こちらに決定。

20階のレディースフロアのコーナーツイン、一面の窓からは新宿側に向けて素晴らしい眺めが開けている。ラッキーなことにお天気は快晴、こんもりと茂った新宿御苑、代々木公園の緑の向こうに新宿の高層ビル群がくっきりと見える。そして、眼下にはスクランブル交差点の雑踏。母、ほとんど窓辺に張りついていた。

ああ、このホテルにしてよかったな、とつくづく思ったもうひとつは、渋谷駅に直結しているので、寒い外に出ないでデパートなどにも買い物に出かけられること。そして、渋谷駅構内の雑踏もどうやら「いい雑踏」認定されたようで、母ご機嫌。

翌朝の朝食は25階の「アビエント」でビュッフェ朝食。窓際の富士山が見えるという特等席に案内してもらった。母によると「白髪を染めなくなってからどこに行っても親切にされるようになった」そうで、この日もこれが効いたのかどうか。

まわりは外国人客が多いのだが、次々と母の後ろにやってきて、この日はくっきりと見えていた富士山の写真を撮りに来ていた。

食べ物にはうるさい母が「ここの卵料理(スクランブルエッグ)はおいしい」。

 

母を連れてホテルに行くと、私には気づかない視点でわかることが多々ある。

たとえば、明るさ。年をとるとうす暗いところだとよく見えなくて歩くのがこわいそうで、全般的に暗い照明の六本木のグランドハイアットなどは完璧にダメ。汐留のコンラッド東京のトイレットも暗くてどこがなんだかわからなくてイヤだと言う。

あと、長年生きてきた年の功で、サービスについては実質を見抜くので、けっしてごまかされない。私などはホテルの裏側を知ってるだけに、今は忙しい時間帯だからしょうがない、などとついつい事情を斟酌しちゃったりするが、母はダメ。許してくれません。大変うるさいです。

そんな母、「このホテル、客層もいいし、サービスもちゃんとしている」。ほっとする娘。

この頃、日本のホテルでもこういう母のようなシルバー世代の人たちをよく見かけるようになったが、ホテル側の対応はどうだろうか。