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ホテルジャンキー村瀬千文とホテルにまつわるヒト・モノ・コト

欲望という名の女心とホテル、両者の利害が一致したとき

東京のホテル 女とホテル

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ヒルトン東京のチャイニーズレストラン「王朝」で

【ストロベリー点心ランチ】(平日の12:00-14:00、税サ抜きで一人4,000円)

というのをやっている。

はて、苺を入れた蒸し餃子とか変わり点心でも出てくるかと思いきや、チャイニーズの点心ランチ + ストロベリースイーツが合体したビュッフェ。

点心ランチの方はお客のリクエストに応じて作るトゥーオーダー・システムだが、これはホテルとしては無駄が出ないし、お客としては出来立てが食べられる。

「共に食べ放題です」とホテル側があおるようにうたっているので、点心→スイーツ→点心→スイーツ→点心→スイーツ・・・の甘辛リピート無間地獄にはいっている方々も多く見かける。

 

ちなみに、日本人の場合、ビュッフェ=食べ放題と思っている方が多いので、ひととおり料理を食べ終えデザートを食べているときに、「さっきのアレ、おいしかったからもう一回食べよう」なんて言って再び料理に戻る人もけっこういるし、いきなり主菜から食べ始めて、前菜、ちょっとデザート食べてからまた主菜に戻り・・・なんていう順番無視の方もよく見かける。

しかし、そもそもビュッフェとは、スタッフによるテーブルサービスを省いたセルフサービスのシステムなので、基本はコースで食べる食事と同じ。

いわゆる高級ホテルといわれるようなホテルにやってくる欧米人などは、前菜→主菜→デザートという通常のコースで食べる順番で料理を取って食べ、逆行することはまずしない。というか、したくても我慢している(と思われる)。

 

バンコクの「グランドハイアット・エラワン」で、地元でも評判というビュッフェ・ランチを取っていたときのこと。

中年のきちんとした身なりの欧米人夫婦が隣のテーブルで食べていた。見るともなく見ていると、背筋をすっと伸ばしたぶれない食事中の姿勢や、カトラリーの使い方、飲み物を飲む前には必ずナプキンで口元をぬぐうなど、幼い頃からマナーをたたきこまれて育ったようすが伺えた。欧米人たちが、こういうところをさりげなく見ては、その人が属するクラス=階級を腹のなかで推定している、ということを学んだのは、かつて私が元駐仏大使のセクレタリーをしていたときのことだ。

さて、私はデザートから合流したホテルの方と一緒だったのだが、その方に「そういえば、ウチのアレ、すごく評判がいいんですけれど、召し上がりましたか?」と聞かれ、「あら、残念。食べませんでした」と言うと、「アレはぜひ召し上がっていただかなくては」と言うなり、その料理を取って戻ってきた。

そのとき、隣の欧米人夫婦がさっと視線を交わし合ったのが見えた。

くだんの料理を食べ終え、再びデザートを取りに立ったとき、欧米人夫婦とデザートの台の前で会った。会釈し、どちらからともなく雑談を交わした際、「あの料理、とても美味しかったんですけれど、召し上がりましたか?」と尋ねると、二人顔を見合わせ「実は残念ながら食べてないんです」と見るからに残念そうな顔で言った。

「召し上がってみたらいかがですか? ここはアジアンカントリーです。マナーはちょっと忘れて、自由人になってみては?」と言うと、奥様、パッと顔を輝かせてご主人の顔を見上げ、「Let's do so! そうしましょうよ!」

先に席を立つ際に「How is it? お味はいかが?」と尋ねると、二人そろって満面の笑みで「Very Good! とっても美味しいわ」。

そして、「たまに自由人になるのはいいねぇ。勇気をくれてありがとう!」とご主人。バイバイと両手を振る奥様の顔がすっかり十代の女の子に若返っていた。

 

さて、ヒルトン東京の【ストロベリー点心ランチ】。

ホテル界に料飲関係の企画は数あれど、これほど、ある意味、なりふりかまわず、「コレとコレ、両方欲しいんでしょ?」とストレートに欲望を形にしたものはない。「ウチはいちおうホテルだしぃ・・・」などというカッコつけは一切なし。なんでもあり街道を力強く歩んでいる。

さらに、ロビーラウンジでやっているストロベリービュッフェが予約が取れないほど人気で、とりこぼしているお客を逃さずにこっちで吸収するというホテル側のしたたかな計算もある。

なにより実質を尊ぶチャイニーズ客たちにも人気のようす。

日本のホテルもインバウンド客で鍛えられ、だんだんたくましくなってきた。

 

*上の写真はヒルトン東京のサイトからお借りしました。