フォーシーズンズ・ホテルズ&リゾーツがフランス・アルプスのムジェーヴに2018年冬、スキーリゾートを開業予定との報が先月はじめにあった。
ムジェーヴ…と聞いてすぐに思い出したのが、
ひとりの、とても印象的なロスチャイルド家の女性。
フランス系ロスチャイルド家の現当主バンジャマン・ロスチャイルド男爵の祖母にあたる、ノエミー・ロスチャイルド男爵夫人である。
ムジェーヴとは、そもそも彼女がみつけ、開発したスキーリゾートである。
それも、ビジネスとしてではなく、個人的に「静かにスキーが楽しめる場所」として…。
彼女は毎年、冬になるとスイスのサンモリッツでスキーを楽しんでいたのだが、第一次世界大戦中のこと、スイスは中立国だったので、彼女の定宿のホテルにも敵国のドイツ人が泊まっていた。
彼女はそれが我慢ならぬとホテルのGM(総支配人)にドイツ人を泊めるなと文句をつけたところ、「スイスは中立国なので誰を泊めようと勝手だ!」と言いかえされ、ロスチャイルド家だってそもそもはドイツのフランクフルト出身だ、というビラを部屋にまかれたそうな。この辺りは、まあ、どっちもどっちという感じだが…。
ともかく。
ここからの行動が、彼女が尋常ではない、さすがに根性あるロスチャイルド家一族の女だと思わせるところである。
世の中は戦争中だったが、そんなの関係なく、すぐさまノルウェー人のスキーコーチにフランスアルプスで「自分が静かにスキーを楽しめる」スキーリゾートとしてふさわしい候補地を調べさせた。
ムジェーヴに決めると、さっそく自分の別荘を建て、スキーリフトを作らせ、まずは自分が心おきなくスキーを楽しめるよう整備した。
そして「モンダルボア・ホテル」を建て、
次第にムジェーヴには彼女の友人ら富裕層たちがスキーに訪れ、高級スキーリゾートとして知られるようになった。
さて、今回、フォーシーズンズと共同でムジェーヴの再開発を手がけるのは、このノエミー・ロスチャイルド男爵夫人の孫のバンジャマン・ロスチャイルド男爵とその妻アリアーヌ。
彼らがオーナーのエドモン・ドゥ・ロスチャイルド・エリタージュ社は、ホテル、レストラン、スパ、ゴルフ場などのホスピタリティー事業やワインの製造業のほか、フランスとアフリカに"狩猟用の私有地"を所有。
とにかく、男も女も、嗅覚にすぐれ、目端がきき、根性と生命力にあふれた一族である。
ちなみに、バンジャマンの亡き父、エドモン・ドゥ・ロスチャイルド男爵は、「クラブ・メッド」地中海クラブの創立者でもある。
*一番上の写真はフォーシーズンズ・ホテルズ&リゾーツのサイトより、そのほかの写真はエドモン・ドゥ・ロスチャイルド・エリタージュ社のサイトよりお借りしました。