コレ ↓ なんだかわかりますか?
書道に使う「墨」です。
母のお供で銀座のギャラリーに墨を買いに行き、生まれてはじめて墨というのがこんなにいろいろあるのを知った。
メーカーによって、原料によって、製法によって、同じ墨の黒でもぜんぜんちがうらしい。四角い形のばかりではなく、鹿だとか、花、とうもろこし、人の顔なんかのもあり、使わず飾っておきたくなるような楽しいものも。
書道はまったくの門外漢だけれど、墨がとても好きになった。
知らない世界をのぞくのは楽しい。
これを見て思い出したのが、先日、パリで訪れたショコラトゥリ、チョコレート屋さん。ここもすごかった。
店内にあるものはすべてチョコレートで出来ている。棚の上の飾りの動物たちも、レジ横に置いてあったキィーボードも、みんなチョコ。
店主のおじさんが、実にていねいにチョコレートを扱うさまが興味深く、思わず乗り出して、じぃーっと手元をみていたら、なぜそのようにチョコレートを扱うのかをこれまたていねいに説明してくれた。このおじさんにとって、自分が作ったチョコレートとは、これすなわち自分の子ども。
パリの左岸サンジェルマンデプレ界隈には有名なショコラトゥリも多いが、みているとここは地元の人たちが自宅で食べるチョコを買うところのよう。
レジで支払いをしているときに、店主のおじさんがわたしに作りたてのチョコをすすめてくれたのだが、うしろで並んでいたおじいさんが、「ワシにもひとつ、くれんかい!」。
行列していたお客さんたち、大笑い。おかげでみなさんお相伴することになり、「チョコって幸せな味なのよね」とうしろのマダム。
さっきのおじいさん、チョコをつまんだ指をなめなめしながら、毎日、その日、夫婦でディナーの後のコーヒータイムにひとつずつ食べる分、2個だけを買いにくると教えてくれた。
「これがワシとバアサンの毎日のきまり」
そんな"きまり"って、いいなぁ、楽しいなぁ。