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ホテルジャンキー村瀬千文とホテルにまつわるヒト・モノ・コト

男が大きな獲物を手にいれた瞬間 〜カハラ買収劇

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男が大きな獲物を手にいれた瞬間の場に、偶然 居合わせたことがある。

1995年、香港でマンダリンオリエンタルホテルの副社長をインタビュー中のことだった。

エクセルシオール香港」のバックヤードにある彼のオフィスは家具も質素で地味なインテリアで、マンダリンのイメージとあまりに違うのに驚いた記憶がある。

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とてもていねいで穏やかな話ぶりの人だったが、取材中にデスクの直通電話が鳴ると、彼の顔つきが一変した。

「エクスキューズミー、直通電話なので」とことわり、しごく冷静な顔つきで相手の言うことを黙って聞くと「OK, わかった」とだけ短く答え電話を終えた。

が、しかし、受話器を置くなり、

「We got it! やった!」

拳を握って小さくガッツポーズ。体の中から興奮があふれだしてきているようだった。

びっくりして見ている私たちの方を見ると満面の笑顔で

「我々がカハラを手に入れたんです!」

「カハラって、ハワイのカハラ・ヒルトンですか?」

「そう、あのカハラ! あのカハラを、手に入れたんですよ、我々が!」

はじけるような笑顔。

男が獲物を手にいれた瞬間の顔だった。

 

その獲物「カハラ・ヒルトン」は、かつてホテル界においては伝説のホテルだった。

1964年にヒルトンの創業者コンラッドヒルトンが開業し、GM(総支配人)として黄金時代を築いたのがリージェントの創業者で名ホテリエとして知られるロバート・バーンズ

名実ともにハワイを代表するホテルで世界各国の王族、アメリカ大統領をはじめ政財界のトップたちが訪れハリウッドスターたちが集まることから「カハリウッド」の異名も持っていた。 

www.ocregister.com

この大きな「獲物」をマンダリンオリエンタルホテルはロンドンに所有していたこちらも名門ホテル「リッツ」を売却した資金で買った。

そして、1996年6月、名前も「カハラ・マンダリン・オリエンタル」と改め、生まれ変わらせた。

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その後、

2006年3月にマンダリンオリエンタルが地元のホテル会社に売却、「ザ・カハラホテル&リゾート」と再び名前を変えた。

2014年10月には日本のリゾートトラストが買収した。

そして、リゾートトラストの発表によると「カハラ」ブランドを世界展開するそうで、その第一号ホテルは2020年夏に横浜のみなとみらい地区に開業予定の「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」。

 

「カハラ」と言う名前は同じであっても、もうあの「カハラ」ではないような気がする。